妻が出て行った。
程なくして実家の母が亡くなった。 
ずっと続くと思っていたものがあっけなく終わった。
母が病室にいる時も、その後も、何の役に立つのかわからないけれどシャッターを切った。 
実家と東京を往復しながら半ば義務であるかの様に写真を撮った。 
その写真を見返す時だけ僕は現実から解放された。
 
写真は撮られたその瞬間から現実とは違う方向へ走り出す。
ましてや撮った時の気持ちなんか写るわけがない。 
気持ちが写っているように見えたならばそれは写真に騙されている。
にも関わらず、撮った自分自身が写真を見返して騙され、記憶に刷り込まれる。 
それでいい。
 一枚一枚写真を撮り続けながら、僕はほんの少しずつ都合よく記憶を書き換える。
そうすることによってだけ前に進むことができる。 
いや前に進むことができると思いたい。
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