2017年7月5日、梅雨前線に伴う記録的な豪雨が福岡、大分両県を襲った。福岡県朝倉市、東峰村、添田町、大分県日田市周辺では河川の氾濫や土砂崩れで甚大な被害が発生した。朝倉市では24時間雨量が500㎜を超えていた。
その日、東京にいた私はニュースを通して送られてくる映像を見ながら落ち着かない気持ちでいた。同時にその気持ちは、現地に行かないと解消されないということを私は経験上知っていた。東日本大震災が発生した時は福島へ向かった。熊本地震の時は熊本へ。とにかく自分の目で確かめたかった。7月11日、私は福岡へ向かった。
私は朝倉市に隣接するうきは市の出身で、母は朝倉市の出身であった。筑後川という大きな川を挟んで朝倉とうきはとを頻繁に行き来して育った。朝倉は身近な場所だった。だから朝倉の写真を撮るのは自分の役目ではないのかという使命感とも意地とも言えないような感情で撮り続けた。
写真は厄災に対して無力である。写真はすでに起こってしまったことを記録することしかできない。人は忘却する。厄災のことも忘れる。地元の人に言われた、「どうせ風化してしまう」と。だから、少しでも抗おうと思う。自分が見た光景が、わずかでも誰かの記憶に残るように。